日本 — 監督・エンフォースメント(FATCA・CRS/共通報告基準・QI)

最終更新日: 2025年11月24日

日本 — 監督・エンフォースメント

誰が何を見ているのか。国税庁(FATCA・CRS/共通報告基準)、金融庁・財務局(ガバナンス・リスク管理・AML/CFT)、 そして IRS(QI レジーム)— 日本の金融機関に対する主な監督分野、想定される措置、典型的な指摘事項、 不遵守に伴う制裁リスクを高レベルで整理します。

1)日本で誰が何を監督しているか

当局・機関主な担当分野代表的な検証・確認項目
国税庁 FATCA・CRS/共通報告基準(自動的情報交換(AEOI)) 報告金融機関の区分・届出状況、FATCA/CRS 報告データ(XML 等)の正確性・完全性、 自己証明書の取得・保管状況、マイナンバー/外国 TIN の取得、口座区分と報告内容の整合性、 期限内提出・訂正報告の実施状況など。
金融庁・財務局 健全性監督、ガバナンス・リスク管理、AML/CFT 経営陣・取締役会によるコンプライアンス全体の統括、 FATCA・CRS・QI を含むリスク管理への組み込み、 内部管理態勢(3線モデル)、AML/CFT ガイドラインに沿ったリスクベースアプローチ、 アウトソーシング管理、システム・データガバナンス、内部監査・コンプライアンス部門の機能など。
金融庁(AML/CFT) AML/CFT ガイドラインに基づくモニタリング 顧客管理(CDD/KYC)、実質的支配者・PEPs の把握、取引モニタリング、 疑わしい取引の届出(STR)、国際的な制裁・凍結資産への対応、 AML/CFT 体制の有効性検証、検証手法の高度化(モデル検証・データ品質検証など)。
IRS QI レジームおよび FATCA(米国側の視点) QI 契約遵守状況、W-8/W-9 等の米国税務書類の取得・保管・評価(reason-to-know 基準)、 米国源泉所得に対する源泉徴収と Form 1042/1042-S による報告、 日米 FATCA IGA に基づく義務、Periodic Certification・Periodic Review、 重大な不遵守に対する是正措置の進捗など。

2)想定される措置・当局の対応

  • 国税庁(FATCA・CRS) 書面照会・データ分析に基づくレビュー、追加資料の提出要請、報告データの訂正・再提出の要求、 過少申告加算税・無申告加算税・重加算税・延滞税等の加算税・附帯税、 故意・仮装隠ぺいが認められる場合には刑事罰のリスクも想定されます。
  • 金融庁・財務局 検査結果に基づく「検査結果通知書」「モニタリングレター」等による指摘、 業務改善命令業務停止命令 等の行政処分、 追加的な自己点検・外部レビューの要求、重要な案件については公表の可能性もあります。
  • 金融庁(AML/CFT) AML/CFT ガイドラインに基づくオフサイト・オンサイトモニタリングの強化、 リスクベースアプローチの不十分さに対する改善要求、 重大な不備がある場合には行政処分・公表に至る可能性があります。
  • IRS(QI/FATCA) ドキュメンテーションの是正、源泉徴収・報告のやり直し、サンプルレビュー範囲の拡大、 Periodic Certification への影響、重大・継続的な不遵守の場合には QI 契約の終了や FATCA 上の非遵守ステータス等を通じて、 米国源泉支払に対する 30% 源泉徴収リスクが顕在化する可能性があります。

3)典型的な指摘事項(例)

  • TIN・マイナンバー/法人番号等の不足・不備: 必要な TIN・マイナンバー・法人番号が取得されていない、フォーマットエラー、 自己証明書が未取得・期限切れであるにもかかわらず是正プロセスが機能していない場合など。
  • 口座区分・居住地の誤判定: 金融機関/非金融機関、アクティブ/パッシブ NFE の区分誤り、 CRS 上の居住地と KYC 情報の不整合、米国の indicia に対する cure 手続が不十分なケースなど。
  • データの不整合・データガバナンスの弱さ: 顧客マスタ・AML システム・FATCA/CRS 報告データ・QI ドキュメンテーション間の齟齬、 データ責任者が不明確で、データ・ラインジ(流れ図)が整理されていない場合。
  • ガバナンス・内部管理体制の弱点: クロスボーダー税務報告の明確な責任者不在、3線モデルが機能していない、 重要な指標(エラー率・訂正件数等)の定期的なモニタリングがない、 規程が最新の国税庁・金融庁・IRS のガイダンスを反映していない場合など。
  • プロセス・技術面の問題: CRS/FATCA 報告ファイルの仕様エラー、期限遅延、テスト不足、 手作業による補正が多いにもかかわらずコントロール証跡が残っていないケースなど。
  • QI 特有の不備: サンプルレビューで過少源泉徴収が判明、W-8/W-9 等の書類に「reason to know」があるのに是正されていない、 Form 1042/1042-S の提出遅延・誤り、是正プロセスが Responsible Officer の Certification を支えるレベルで文書化されていない場合など。

4)制裁リスク(ハイレベル)

  • 税務上のペナルティ・刑事リスク: FATCA・CRS 関連の法定調書や報告義務に係る不履行・虚偽記載に対する加算税・延滞税等の賦課、 悪質な場合には刑事告発・罰金刑のリスク。
  • 金融監督上の影響: 金融庁・財務局による検査結果を踏まえた業務改善命令・業務停止命令・一部業務制限などの行政処分、 監督上の評価悪化やモニタリング強化につながる可能性があります。
  • AML/CFT に関するエンフォースメント: 疑わしい取引の届出不備、大口現金取引・海外送金モニタリングの不備等が 大規模・継続的である場合、重大な AML/CFT 制裁や公表に発展するリスクがあります。
  • 米国側(QI/FATCA)のリスク: FATCA 上の「非参加金融機関」とみなされるリスク、QI 契約の終了・制限、 特定の米国源泉支払に対する 30% 源泉徴収のリスクなど、 米国市場・米ドル決済へのアクセスに直接影響し得る制裁が想定されます。
  • レピュテーションリスク: 行政処分や税務・AML 関連のエンフォースメントが公表された場合、 顧客・投資家・市場からの信頼に影響し、中長期的な資金調達コストやビジネス機会にも 波及する可能性があります。

5)予防と是正のポイント

予防的な取り組み

  • FATCA・CRS・QI を含む統合的なコンプライアンス・プログラムを策定し、 金融庁 AML/CFT ガイドラインやリスク管理・ガバナンス関連の監督指針と整合させる。
  • データ・ラインジとマッピング(顧客情報 → 勘定系・AML システム → 報告ファイル)を文書化し、 国税庁の技術仕様に沿ったリコンシリエーション・品質管理・テスト報告を実施する。
  • TIN・マイナンバー・GIIN・ステータス確認の定期的なコントロール (IRS 公表リストとの照合、自己証明書の妥当性チェック、定期的な顧客フォローアップ)を行う。
  • KYC/AML と税務ドキュメンテーションの統合を進め、 1つのオンボーディング・プロセスで AML/CFT・FATCA・CRS・QI の要件をカバーできるよう設計する。
  • フロント・オペレーション・税務・コンプライアンス・リスク・IT 向けに 定期的な研修を実施し、国内外の最新のエンフォースメント事例を共有する。

指摘を受けた場合の対応

  • 指摘ごとに体系的なルートコーズ分析を行い、 優先度・責任者・期限を明確にした是正計画を策定・トラッキングする。
  • 各イシューについて、識別 → 分析 → 是正 → 再テスト → クローズまでの 一連のプロセスを文書化し、国税庁・金融庁・財務局・IRS に提示可能な エビデンスと監査証跡を残す。
  • 是正後に KYC/AML ↔ FATCA/CRS ↔ QI のデータセットを突合し、 整合性を回復した上で、再発防止策を業務プロセスに組み込む。
  • 必要に応じて第三者によるインディペンデントレビュー (内部監査または外部アドバイザー)を活用し、改善策の有効性を検証するとともに、 経営陣・Responsible Officer の確認・認証を支援する。
免責事項: 実際の監督・エンフォースメントの内容や制裁の有無・水準は、個々の事案の事実関係や適用される 法令・ガイダンスにより異なります。本ページは一般的な情報提供のみを目的としており、 個別の案件については、最新の国税庁・金融庁等の公表資料や専門家への相談が必要です。